セラノス、アリゾナ研究所も免許停止

セラノス問題は新たな局面へ、2つ目の研究所も免許停止

Onebox News·
セラノス、アリゾナ研究所も免許停止
Fortune

セラノス、それはある時までは女性起業家の憧れの的であった。黒のタートルネックなどアップルのスティーブ・ジョブズに似せた装いや生活を送っていた創業者のエリザベス・ホームズは33歳にして「米国で最もリッチな自ら稼ぐ女性」として5000億円以上の資産を持つ人であった。(その後のセラノス問題によりフォーブスは彼女のセラノス株の評価額を0ドルと判断した。)

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先月、米メディケア・メディケイド・サービスセンターはセラノスの研究施設が患者を危険にさらしたうえ、多数の不備に迅速に解決行わなかったと判断し、アリゾナ州にある研究施設の検査免許停止という最も重い処分を科したと、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。これはウォール・ストリート・ジャーナルが行った公的記録の開示請求による明らかになったという。

セラノスは既にカリフォルニア州の研究拠点は2016年7月に免許停止処分の判断が下り、セラノスは不服申し立てをしている。カリフォルニア州の処分が控訴裁で支持された場合、セラノス創業者のエリザベス・ホームズと研究所責任者は最低2年間、研究所の所有または運営が禁止される。セラノスは免許停止処分後の昨年、10月にこれまでの血液検査事業から実験装置の開発に軸を移す事が明らかになっていた。

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セラノス問題とは

ごく微量な血液だけであらゆる200超す血液検査を安価に短時間で行うことが出来るを謳い、当時19歳でスタンフォード大学の学生だったエリザベス・ホームズによって2003年に創業されたセラノスは消費者だけでなく投資家でさえも知るこのできない秘密のレシピで6億8630万ドル(約773億円)余りを集め、企業価値は90億ドル(約1兆円)を超えていた。ニクソン政権で国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャーや労働省長官ジョージ・シュルツやクリントン政権で国防長官を務めたウィリアム・ペリー、ウェルズ・ファーゴの元会長兼CEOのリチャード・コバセビッチなど政界・財界の有力者を取締役として取り込む事で自社の信頼に結びつけていた。(しかし、同社の事業に関係する経歴を持つ人物がいなかった事が事業に対して疑問視する人々が増えた一因でもある。)キッシンジャーやシュルツらは騒動後に取締役を去っている。

追い風となったのが2013年にアメリカの大手ドラッグストアチェーン「ウォルグリーン」と提携し、全米46ヶ所に採血センターを設置。アリゾナ州での新法成立により、医師の指示がなし血液検査が行えるようになったことだ。

だが、当初より(余りに極端な秘密主義に)疑惑の目を向けられる存在でパロアルトに本社を置くセラノスはシリコンバレーの名だたるベンチャー・キャピタルらに出資を求めていたが、全く明かされない秘密のレシピと調査などで不確実性の大きさなどからそのほとんどに断れていた。しかし、大手でいえばドレーパー・フィッシャー・ジャーベットソンやタコ・ベンチャーズ、オラクル共同創設者のラリー・エリソンなどが投資家に加わったことによって他の多数のあまりなの知られていないベンチャー・キャピタルや事業に疑問を持っていた投資家らも多数参加する事となり瞬く間に数百億円が集まった。

2014年にその検査結果に対するに疑念が高まると政府機関らが調査に乗り出した。米フォーブズが独自で調査をしていたところ、同社の売上が1億ドル(約112億円)にも満たない事が分かり、更に複数のベンチャーキャピタルや専門家らから聞き取りを行い、同社の評価額を8億ドル(約901億円)と従来の10分の1以下に引き下げた。

その理由の多くは同社が90億ドルの価値を持つという以外に一切情報がない事にあるという。セラノスは指先を針で刺し、数滴の血液をガラス管に採取するだけで200以上もの検査を行うことができる革新的な技術を開発していると豪語しているが、これまでに詳細のデータが公表された事は一切なく、そもそも、そんなものが存在するかすら不明なのだ。

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そんなセラノスの正体が明らかとなったのは、2015年10月15日のウォール・ストリート・ジャーナルのスクープ記事だった。ウォール・ストリート・ジャーナルの記者ジョン・カレイロウは彼女の経歴を読み、異常なまでの秘密主義に疑問を持った。ピュリッツァー賞受賞経験をもつカレイロウはすぐに情報を集め始めた。わずか数カ月でカレイロウの元には多くの情報が集まってきた。

その調査の結果、彼はある1つの結論に至った。セラノスには彼女らが言うような技術は存在しないという事だ。この調査で分かった重要な事は以下のとおりだ。

  • セラノスの血液検査機器・エジソンには正確な評価を行えるほど精密には血液サンプル中の細胞を検出できない。血液は少量薄めただけでも全く違う結果を示す。セラノスは血液を薄めて、機器の中を上手く通すように調整していた。


  • セラノスの研究所には一般的な血液検査に使われる機械が設置されており、革新的自社技術により行っているとした検査の多くは、実際にはこの機械によって行われていた。


  • Source:Wall Street Jounal

    つまり、実際にはセラノスがいうような「革新的技術」など存在せず他の血液検査会社が使っているような、ありふれた既存の血液検査機器によって検査が行われていたということだ。しかも、CILAの技能テストでもデータを捏造するという不正を行っていることも分かったのだ。

    10月15日、この記事は調査記事として同紙に掲載され大きな衝撃を与えた。ホームズは直ぐさま、その晩のCNBCに出演しウォール・ストリート・ジャーナルを「タブロイド誌」と扱き下ろした上で「物事を変えようとすると、こういったことは起こるものです。人々はクレージーだと言うでしょう。彼らは強く抵抗するでしょう。そして突然、世界を変わるのです。」といつものホームズ節を効かせたが、既に事態は収集できない所にまで来ていた。ウォール・ストリート・ジャーナルの報道をきっかけに各紙が一斉に調査を開始し「血液凝固テストに不備があることを知りながら80人以上に半年に渡り検査を続けていた」など様々な実態が相次いで暴露される事態となった。

    大手ドラッグストアチェーン「ウォルグリーン」はセラノスの技術が立証されるまでこれ以上運営しないことを発表し、セーフウェイは完全に撤退した。遂に神話は崩壊したのだ。

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    だが、一つ注意しなければならないのはこれで全てが黒と決まったわけでも「有罪」を言い渡されたわけでもないということだ。(ただ、ほぼ黒に近いということは間違いないが。)まだ、不服申し立てが今後どうなるかによって全く異なるということだ。しかし、少なくとも同社に90億ドルの価値があるかと言われれば間違いなくNOであると言える。

    多くの投資家やキッシンジャーを始めとする取締役は自分ですら全く知らない「魔法のレシピ」の存在を信じてやってきた。数百人を抱えていた同社の従業員の中にどれだけの人間が秘密のレシピが存在すると思っていたのか、それすら分かっていない。ただ皆んなあると信じていた。見たこともない魔法のレシピを。まるで映画のような話しだ。しかし、間違いなく現実だ。今回のアリゾナ研究所の免許停止は映画のエンディングのほんの入り口にすぎないのかもしれない。

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