Snapchatの上場申請書から見える5つのこと

Onebox News·

Snapchat

遂に2017年最初のIPOが決まった。Snapchatは最近から知っているという人もいる(というか、中高生あたりは結構知っているのではないか)であろう「消える」メッセンジャーアプリだ。元々は友達同士のふざけた画像や学生ならでは(とも言えないかもしれないけど)保存はされたくない性的な画像を送りあうアプリとして(保護者や大人の巣窟となったFacebookから逃れてきた)ティーンエイジャーに爆発的に受けた。

2011年に3人のスタンフォード大学の学生によって開発され、2013年にはFacebookのマーク・ザッカーバーグから3000億円以上での買収提案を受けたがこれを拒否したことでも有名になった。あと、ゴシップ好きな人はヴィクシーのスーパーモデルのミランダ・カー(オーランド・ブルームの元妻)と去年婚約したSnapchatのCEOエヴァン・シュピーゲルを知っているのかもしれない。

特にSnapchatは他のシリコンバレーの企業たちと比べても変わっている。多くの有名VCから資金を集めているが、彼らの拠点は多くのスタートアップがひしめき合うシリコンバレーやサンフランシスコなどではなくロサンゼルスのベニスビーチからしばらくのところで1859人以上の社員を抱えている。(CEOであるエヴァン・シュピーゲルがシリコンバレー嫌いというが、理由は分からない。)元々、このあたりはGoogleなどのオフィスはあってもこれだけ大規模の企業を受け入れるほどのオフィスなどはほぼないので、最近は周りにこれだけの人数が収容できるオフィスがなく拠点は無数に分散しているという。今回のIPOはおそらく250億ドル(約2兆8146億円)規模になると見られアリババ以来の大型IPOとなるだろう。

では、今回は3月下旬頃だと見られるIPOに向けて明らかになった同社の上場申請書から見える5つのポイントを整理してみよう。

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Snapchatはカメラ会社である

Snap Inc.

Spectacles

一応、Snapchatは社名変更してSnapと名乗っているがSnapchatで広く知られているので記事中では旧社名で続けたいと思う。元々、Snapchatが社名変更を行った理由の大部分は同社が手がけるもう一つの実験的事業Spectaclesにあると考えて間違いない。Spectaclesはサングラスのようなメガネにカメラが付いており撮影、Snapchatで送信できるもので、現在、突如自動販売機が出現しては買えるという非常に奇妙な売り方をしている(つまり、まだビジネスとして取り組むつもりではなく一定の数を抑え色々と変更を加えたり試しているとみられる。)

既にSnapchatはティーンエイジャー向けのメッセンジャー・アプリ開発会社ではなく(ティーンエイジャー向けということ変わりないだろうがもう少し広げてヤング向けの)カメラ会社である。だが、現時点でSpectaclesが業績に貢献できるほどのものではないと同社も考えており、あくまでその一歩として現在取り組んでいるという状況だ。そして、この「我々はカメラ会社である」という言葉は彼らが目指す道を明らかにしているといえるだろう。

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売上高は454億円、損失は577億円ほど

WSJ

Snapchat CEOのエヴァン・シュピーゲル

まだ黒字転換は出来ていないが着実に売り上げを伸ばしていることは事実だ。昨年に4億448万ドル(約454億円)を売り上げた同社だからその1年前の2015年の収入はわずか5870万ドル(約66億円)に過ぎなかった。ただ、決算では2016年に9億2500万ドル(約1038億円)の費用を支出し、最終的には5億1464万ドル(約577億円)余りの損失を計上している。その内営業活動には6億1120万ドル(約686億円)の費用が発生している。2015年は3億660万ドル(約344億円)だった。

また、飛び抜けてサーバーに掛かる費用が莫大だ。同社はGoogleのクラウドサービスを利用しているが今後5年間でその利用料として20億ドル(2263億円)を支払う可能性があるという。ショートビデオ(動画)を他のサービスと違って頻繁に送りあうSnapchatのユーザーが毎日1億5800万人いることは(もちろん素晴らしいことだが)同社のサーバーの大きな負担の要因だ。現時点ではGoogleやFacebookなどのように自前のサーバー施設を持つという考えはないというが、ただコストの圧縮には努めていくという。

これまでに総額26億ドル(約2955億円)以上を集めてきたSnapchatは現在、総資産が17億2200万ドル(約1933億円)で総負債は2億400万ドル(約229億円)ほどで、現金及びに現金同等物は9億8700万ドル(約1108億円)で、フリーキャッシュフローは昨年12月末の時点で6億7770万ドル(約758億円)。

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成長は既に鈍化気味、Instagramの影響かも

Snap Inc.

2014年のQ4で大幅減速

これから大きな売り上げを生み出す可能性を秘めているSnapchatだが、既にサービスとしてはその成長性には陰りが見られており、今後も成長鈍化に波が掛かるとTwitterの二の舞になる可能性もある。その主な成長鈍化の原因と考えられるのは、過去にSnapchatの買収を試み失敗したマーク・ザッカーバーグ率いるFacebookの傘下であるInstagramによる徹底した機能の模倣が成果を挙げているのかもしれない。InstagramのCEOも模倣したと認めているストーリーと呼ばれる機能は毎日1億5000万人(Snapchatは1億5800万人)が利用する人気機能となり、広告枠は売れに売れ、同社の今年の広告収入は36億4000万ドル(約4200億円)に達する見通しで前年比で96%増、フェイスブック・グループの10%以上を超えると見られ、占めると見られているほどだ。(参考「インスタグラム、ストーリー機能の広告拡大 売上は4200億円以上に」)

今後も成長の波が萎んでいくことは長期的に同社の価値やあるいは業績にも影響を及ぼす危険を秘めている。他のサービスと比べ特にユーザーの年齢層の裾野が狭く(24歳までのヤング層が全体の6割を占める)、それより上の世代でのユーザー数拡大を出来ていないのが現状だ。Spectaclesなどの新規事業も将来的には利益に貢献できる可能性も十分あるが、同社の価値のほぼ全てを占めるのは依然Snapchatであり、会社の価値を維持・上昇させるためにはサービスを再び成長軌道に乗せユーザー数を拡大することは絶対的に不可欠なことだ。(昨年にはサービスの成長がほぼ止まっているTwitterを抜いているが、ただFacebookやWhatsApp、Instagramなどのフェイスブック・グループの3つのサービスには遠く及ばない。)

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2人の創業者による完全支配を確立

Dallas Morning News

共同創業者のボビー・マーフィー(左)とエヴァン・シュピーゲル(右)

同社はこれまでのシリコンバレーでは類を見ないほど創業者二人が大きな力を持っている。これは以前の記事「Snapchat、IPOの株は全て無議決権株式」で紹介した内容だ。二人は株式ベースで約44%、議決権ベースで70%以上を保有しており、二人で(おそらく)ほぼ全ての事項の決定を下せる状態でそれは今後も「継続」予定だという。また、今回のIPOに際して2人には新たに3%の株式がボーナスとして付与される見込みで、その評価額は共に6000億円を優に超えると見られる。

同社は種類株式を導入しているがその内訳は3つだ。

Aクラス:如何なる議決権も持たない。IPOで売り出される株式。
Bクラス:各株式が1票ずつ持つ、既存の投資家などが保有。
Cクラス:各株式が10票ずつ持ち、2人の創業者が全て所有する。

これまでもGoogleやFacebookなどを始めて種類株式で持って議決権の差異を付け支配を確立するというのはかなり一般的であった(特にシリコンバレーから公開市場に出てくる企業では)だが、公開市場で売り出す株式が「一切の議決権を持たない」のは類を見ない。つまり、IPO後に株を手に入れる全ての人々が手にするのは同社の価値の分配されたものであり、議決権という権利は一切分配されることはない。今後もこれまでのまま会社を導いていく事となる。(口うるさくいう後から来た大株主に気を使う必要もない。)また、このCクラス株については創業者が会社を辞めた後も普通株に転換されることはなく同等の力を持ち続けられるという。(つまり院政を敷くことも出来るということ。)

この2人の創業者の特別Cクラス株式はどちらかが死亡すると生存する方に継承されるとシュピーゲル、マーフィーがお互いを共に指名しており、他の人物が相続することは不可能だ。つまり、二人が唯一であり(ほぼ)永遠の支配者である。そして、最近の企業では珍しく昔のアップルを思わせる「強烈な秘密主義」を敷く同社の計画を知るものは一握りで全ての計画を知るのは2人の創業者の1人エヴァン・シュピーゲルCEOのみであるという。

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追放した3人目の創業者とは和解していた

LA County Superior Court

Snapchatの誕生を祝う3人。右からレギー・ブラウン、ボビー・マーフィー、エヴァン・シュピーゲル。

これは前回の「Snapchat、追放されたもう一人の創業者の物語」で紹介した。レギー・ブラウンはSnapchatの消えるというアイデアを生み出し、あの有名なゴースト(あるいはお化け)のロゴを生み出し、社名も考案した人物である。彼は現在のSnapchatのアイデアを同じ大学の寮で友人となったエヴァン・シュピーゲルに話し、二人で始め、そこにボビー・マーフィーがエンジニアとして参加しスタートした。Snapchatは非常に早い段階で成功を収めたが、彼はその後シュピーゲルとマーフィーによって会社から追放された。その詳しい経緯については是非、記事を参考にしてほしい。

彼はエヴァン・シュピーゲルとボビー・マーフィーを訴えていた。資料によると両者は2014年に和解し同年に5000万ドル(約56億円)、翌2015年に1億750万ドル(約121億円)の合計177億円を支払った。因みに現在のSnapchatの時価総額は250億ドル(約2兆8146億円)を超え二人の創業者は共に6000億円以上の資産を持つ。彼が手に入れたのは二人の3%にも満たない額だという。

そして、同社の大株主(5%以上保有)リストには彼の名はなかった。

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このままスムーズに進めば同社は2017年初のIPO(株式公開)として3月下旬にもニューヨーク証券取引所にIPOを果たす。

備考:この記事は2月5日時点に作成された記事で、情報は同日時点でのものとなります。

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